事例研究会は、外国にルーツを持つ子どもたちの具体的な事例を通して、彼らの背景にある事情や問題を読み解く力をつけていくというねらいで開催しています。9月、10月に開催した研究会をまとめて報告します。
【9月事例研究会】
日時:2022年9月24日(土) 13:30~15:30 オンライン(Zoom)
事例:「中学生と高校生や大学生になった教え子たちの様子~アイデンティティに関して~」
参加者:4名
中学校の先生から、3つの事例が報告されました。いずれも、自分のアイデンティティについて初めて他者に話をしたという事例でした。学校では日本語、家庭では母語という生活の中で、分からない母語があったり母国の生活を知らなかったりする自分を中途半端に感じているという事例、これまでの自分の境遇を振り返り、この生き方が正しいのかどうかと感じているという事例、異なる母国出身の両親のどちらの考えも持ち合わせていない自分には心の中の祖国が存在しない寂しさを感じ始めているという事例でした。
協議ではアドバイザーの先生から、アイデンティティは外国籍のみのものではないが、外国籍の子どもにはルーツに関わるアイデンティティがある。子どもと対応する時に重要な姿勢は、客観的な情報を提供していくということである。子どもの自己決定権を大切にし、自分自身で選ぶことができるように様々な情報を提供していくことであるという助言をいただきました。
今回は、子どもに関わる大人の姿勢の在り方について考える学習会となりました、
【10月事例研究会】
日時:2022年10月12日(水)19:00~21:00 オンライン(Zoom)
事例:「家庭内言語が親子で異なる子どもについて」
参加者:6名
中学校の先生から、簡単な日本語程度しか理解できない保護者と、母語がほとんど理解できない子どもとの事例を提供していただきました。親子間で互いの愛情がうまく伝えきれず、子どもは不安感や学校生活で感じる不満などを家庭で話せず、外の人間関係へと繋がりを求めてしまい、親子とも母国のコミュニティと疎遠になってしまっていて、親子の間を取り持ち支援するのは母語と日本語の両方を理解できる姉であるという事例でした。このような子どもに対する支援として、姉にどこまで頼っていいのか、進路も含め将来へつながる支援としてどのような支援をしていくかといった課題が出されました。
協議では、アドバイザーの先生から、出身国による適応の違いがあり、それを踏まえて支援をしていく必要があること。支援は子どもの持っている資源を増やしていく、本人がやれる、やりたいことの中でできることを増やしていくようにすること。そして、話すことで思考を深めるような支援をしていくことが大切であるという助言をいただきました。
今回は、出身国の文化的・社会的背景を知ることや、学校は学力をつける以外に将来の世代につながる資源を子どもに提供するという重要な役割があることを学ぶ研究会となりました。