【報告】7月事例研究会

 事例研究会は、外国にルーツを持つ子どもたちの具体的な事例を通して、彼らの背景にある事情や問題を読み解く力をつけていくというねらいで開催しています。今回は7月5日に開催した事例研究会の報告です。

【7月事例研究会】

日時:2023年7月5日(水) 19:00~21:00(Zoomによるオンライン開催)

内容:授業研究(「対話」を取り入れた授業研究)

参加者:4名 

 7月は授業研究を行いました。4月26日に開催された外国人の子ども理解のための学習会で、講師の宮崎あゆみ氏と清水睦美氏から、「外国人の子どもたちの自己形成~対話の持つ意味」について講義をしていただきました。 今回の研究会では、4月の学習会を受けて、「対話」を取り入れた授業研究を行いました。

 スタッフより、4月の講義内容について確認をしてから協議に入りました。協議では、学校の中での子どもの「語り」がまず話題になりました。授業を進めていくことが中心となり、子ども同士、子どもと教師の間の語りが少ない。道徳の時間に語りの時間はあるが、それは教師がおぜん立てした語りであって、今の学校の中で語りが可能な時間は休み時間となっているのではないかとの指摘が小学校の先生からあがりました。また、国際教室を担当されている先生からは、国際教室では先生と子ども2人という形で授業をしていて、授業の時にはおしゃべりを自由にさせているが、大人数での語りの中で個人の経験を語ることは難しいのではないかと感じるという意見が出されました。

 続いて、子どもの語りを保障するための実践として、小学校の先生からは、人に対して語らない子ども、自信のない子どもに声をかけるようにしていると、子どもが語りたいことをポツポツと語るようになってくるという報告がありました。そして、周りの大人に聞いてほしいことを話す時間が今の学校生活の中で失われている、語りに来ない子どもはどこで語りたい思いを消化できているのだろうかという疑問が出されました。さらに、先生たちに気持ちのゆとりがなく、子どもから話を聞きだすことが多くなっていて、子どもの語りを聞く時間がなくなっているとの指摘もありました。国際教室担当の先生からは、国際教室にふらっとやってきて「実は・・・」と言い始める子がいて、教室では語れないことを語る場所を提供することが大事だと感じるという意見が出されました。そして、参加された先生は、担任とは違う立場で子どもに関わっているため、子どもが担任に話せないようなことを聞けるようにしているという、聞き手の姿勢にも触れていました。

 アドバイザーの先生からは、子どもが語る行為が行えれば、どういう形での語りでもよい。子どもが語ったときのリアクション、受け止める、流さないといった聞き手の姿勢が重要である。語る場が、「こうしなければここにいてはいけない」という場ではなく「できなくてもそこにいていい」という場になれば、子どもは語れるようになる。とのアドバイスがありました。そして、子どもが先生の管理や評価の対象になると子どもが語る時間がなくなっていくという指摘もされました。

 協議を通して、子どもが語れる環境を大人(教師)が用意する、それは時間や場所だけではなく、聞き手としての大人(教師)の姿勢をしっかりと持つことだということを確認できました。先生や友達と語り合える時間や場所をもっと作っていくことが必要ですが、もっと多くの大人(教師)が、子どもたちが「語りたい、語ってもいい」と思える聞き手になっていくことから始めなければならないと感じます。今回の授業研究を受けて、子どもの語りの聞き手となることを今まで以上に意識し、聞き手としての実践を行い、実践報告をしていく予定です。