事例研究会は、外国にルーツを持つ子どもたちの具体的な事例を通して、彼らの背景にある事情や問題を読み解く力をつけていくというねらいで開催しています。今回は9月30日に開催した事例研究会の報告です。
【9月事例研究会】
日時:2023年9月30日(土) 14:30~16:30(Zoomによるオンライン開催)
事例:「不登校の傾向が出てきた子ども」(事例提供:事例研究会担当スタッフ)
参加者:4名
9月は、事例研究会スタッフから、Ed.ベンチャーが主催する外国人の子どものための学習教室、エステレージャ☆ハッピー教室に通う子どもの事例を報告しました。
2020年に来日し、4月に中学生になった子どもで、9月に入ってから学校の欠席が続いている中学生について報告をしました。2年生の1学期途中までほぼ欠席することなく通い、6月の学校行事が終わってから部活を理由に参加をしていなかったため、スタッフは部活に参加できるようになり学校生活もうまくいっていると安心していたところ、9月に入ってから学校に登校していないということが分かったという子どもの事例です。これまでのエステレージャでの様子や、9月に入り、編み物道具を持ってエステレージャで過ごしている様子、家庭訪問の様子や担任の先生とスタッフが連絡を取ったことなどを報告しました。
協議は、アドバイザーの先生からのアドバイスから始まりました。複数言語環境下に置かれる子どもは、言葉と気持ちが一致せずモヤモヤとした状態にいるので、経験を語らせることが必要である。高学年以上の子どもたちには、経験を語らせ、聞き手が経験を共有しながら、人生を一つの物語としてつなげる機会を作る必要があるとアドバイスをいただきました。このアドバイスを受け、地域ボランティアとして外国人児童の学習支援に携わっている参加者から、不登校ではないが、字を丁寧に書くものの学習内容を理解していない様子が見られるという、Nさんと似ている子どものケースが報告され話題となりました。小学校の先生からは、字がきれいに書けているからわかっているわけではない、完璧主義の子どもは周りのプレッシャーを受けていると指摘がありました。そして、アドバイザーの先生からは、人との関係は勉強と結びついているので、気持ちを他者に開いていないと、その場にいても勉強した内容が残らない、子どもの自己肯定感や自己の尊厳を保障することが必要だというアドバイスがありました。そして、他者に開いていない子どもの心を開くことが私たち大人の役割であること、そのためには、対話(雑談)する時間を大切にすること、そして子どもに教えるのではなく子どもと一緒にやろうという姿勢を大人が持つことが大切だということを参加者で確認しました。
今回の研究会は、4月に開催した外国人の子ども理解のための学習会でテーマとなった「対話」につながる研究会となりました。学校、地域の学習教室といった教育の場で、子どもとの対話をもっと大切にしながら支援をしていく必要を再確認しました。