事例研究会は、外国にルーツを持つ子どもたちの具体的な事例を通して、かれらの背景にある事情や問題を読み解く力をつけていくというねらいで開催しています。今回は7月13日に開催した事例研究会の報告です。
【7月事例研究会】
日時:2024年7月13日(土) 13:30~15:30
事例:「問題行動が心配される子ども」
事例提供:大和市内小学校教諭
参加者:6名
保護者が日本生まれの外国籍児童として国際教室に通室した経験のある小学生A君の事例が紹介されました。家庭では母語、学校では日本語という二重言語環境にいて、日本語での日常会話はできるように見えているけれども語彙は少なく、ひらがなカタカナがかろうじて読み書きできるといった状態で、学校の授業はほとんど分からず、勉強に興味を示さない。保護者も子どもが学校の勉強が分かっていないことについて無関心である。昨年度3学期になり、少しずつ勉強に取り組めるようになり、今は国際教室での勉強に意欲的に取り組むようになってきている。しかし、学校をさぼる、大人に暴言を吐くなど様々な問題行動があり、友達はほぼいない状態で、問題のある子と位置付けられてしまっている子どもの事例でした。事例とともに、A君に対する国際教室での取り組みも紹介されました。
協議では、まずA君の保護者への対応が話題となりました。A君の祖父母の来日の経緯を考えると、生活する(お金を稼ぐ)ことができればいいということが第一であるため、日本の学校で重視される読み・書きといったことが後回しとされる。そういった環境の中で育ったA君の保護者は学校の勉強ができなくても何とかなるという経験を持っている。保護者には日本の子育ての情報がないのかもしれないので、学校が子育てのやり方を保護者と一緒に考えるということが必要であるといったことが参加者から出てきました。
次に国際教室の役割が話題となりました。A君が国際教室で母語を話す姿を見ていて、母語を話す子どもが出てきたという報告がありました。アドバイザーの先生から、マイノリティの子どもたちは将来つながることがあるので、未来を想定して今の出会いを作っておくことが大切であるというアドバイスがありました。そして、外国人=日本語通じないというレッテルを貼られるということが話題となりました。このレッテルは社会の中だけではなく学校の中にもあり、「日本語が通じないから分からないでしょ」という理解をしたり、分からないから支援や指導をしなかったりということがある、ということが話題にのぼりました。アドバイザーの先生からは、言葉を通訳するのには時間がかかる、うまくいかなくてもいいと考えるおおらかな雰囲気が学校には必要で、先生が違いを面白がってくれるといいというアドバイスがありました。
今回の研究会では、ルーツを知ることで子どもの家族の考え方を理解することにつながることや子ども同士の将来のつながりを作るという役割が国際教室にあることを再確認することができました。そして、学校や先生が外国にルーツのあること、違いのあることについて、寛容であることが必要だと感じました。今、社会全体に寛容さがなくなっていると感じます。学校が寛容な場、多様性が認められている場であることが、外国ルーツの子どもたちが居やすい、居心地のよい学校になるのだと思います。