「人権感覚を磨く」講演会報告
去る5月27日、世界人権問題研究センター研究員の松波めぐみ氏をお招きして、「人権感覚を磨く」というテーマで学習会を行いました。第1部は、「みんなの学校」として有名な大空小学校の実践のドキュメンタリーを視聴しました。不登校も特別支援学級もない、同じ教室で一緒に学ぶ、その理念はふつうの公立学校で、どのように実現しているのかを知る大変いい機会になりました。
第2部では、「障がいの社会モデル」を切り口にして、「人権感覚を磨く」内容のお話を松波さんよりお聞きしました。冒頭で取り上げられたのは相模原事件です。46人殺傷で19人死亡という大事件にもかかわらず、1年半経過した今、他の殺人事件と比較した場合、「語りにくい(語られない)」「徹底した被害者の匿名報道」「容疑者についての語りにくさ」といった特殊な状況が生み出されているといいます。加えて、容疑者が元職員であるということにより、「近くで接する」ということが、かならずしも理解や共感を約束しないということも明らかにした事件で、障がい者、その家族に大きなショックに与えた事件でもあるそうです。松波氏は、こうした状況を生み出す背景に流れるのが「優性思想(障害者は不幸を作り出す)」で、氏は様々な事例をもとに、私たちの気づかないところで日常に深く入り込んでいる優性思想を、次々とあぶり出すように講演が展開していきました。そして、優性思想から距離をおく営みこそが「人権感覚を磨く」ことであり、それにより「障がいの社会モデル」の営みが進んでいくという道筋がよくわかる講演でした。
参加者は12名で、お子さん連れの参加者も2名おりました。質疑応答も活発で、参加者の意識の高さが感じられる講演会でした。(報告SM)
以下、参加者の感想の抜粋です。
●今、当たり前に過ごしていることは、マジョリティであるがゆえに配慮され、困ることがないのだと。どうしても、日々過ごしていると、少数の声に耳を傾けようとすることが少なくなってしまいます。自分が困った時に考えるのではなく、日頃から意識することが大切なのだと感じました。(TM)
●「すべての子どもに居場所をつくる」というのは、子どもを居場所になじませるようにするのではなく、居場所を教師や周りの大人が子ども達に合わせて変化させていくことができなければならないと感じました。(HM)
●障がい者の入所施設について、これまで福祉制度の視点からあまり違和感がなかったが、今日のお話を聞いて、構造的に排除された場所で、障がい者の存在を見えなくしている場所であることがとても納得できた。(RR)