インクルーシブな社会を目指す学習会報告
日時:2020年6月24日(水) 19:00~21:00(Zoomによる)
参加者:10名
講師:二羽 泰子氏(東京大学大学院教育学研究科付属バリアフリー教育開発研究センター)
内容:合理的配慮と多様な子どもたちの学級づくり ~ジレンマを乗り越えるために~
今回の学習会は、講師に二羽先生をお招きしてワークショップ形式で行いました。
“合理的配慮”とは、「多様な人が共生していくうえで必要な変更や調整」であり、「特定の個人ではなく環境全体への働きかけを指す言葉」であることの確認から学習会が始まりました。
全体を通してのキーワードは“共生”。
“差異のジレンマ”という言葉が印象に残っています。これは、集団の中の個人の差異が大きい場合、平等を求めすぎてしまうと、元々ある不平等が温存されてしまうというもの。「苦手なものを持つ子に対して支援を行うことが、ことさら差異を強調し、ネガティブな印象を強くしてしまう」という説明に、日々接する子どもたちを思い浮かべながら共感しました。
平等ではなく“共生”を目指すことが、差異のジレンマ克服のカギであり、目の前の課題を集団の課題・学級の問題と捉えることで、集団の分断を回避することができると学ぶことができました。
後半は、グループに分かれての事例検討を行いました。
「落ち着いて授業を受けることのできない転校生のAさん。クラスでは、Aさんに対してのからかいから、けんかなどのトラブルも増えていきました・・。」個別の対応は担任1人では難しく、“共生”を目指すのであれば、教員集団・学校全体の課題として取り組むべきという指摘に、「子どもに対して何ができるかよりも、我々がどのようにその子を受け止めるのか」を問われていると感じ、視野の広がりを実感する学習会となりました。(M.H)
~ 以下、感想からの抜粋 ~
〇誰かの問題ではなく、学級の問題として考えるというお話が印象に残っています。クラスの中で起きていることをじっくり話し合う、という機会を設ける時間的余裕がなく、教員側にも、そういった視点からクラスを育てていくという感覚がないように感じます。学校(教員集団)としても、学級のこと、学年のことというように、学校全体で考えるという視点が失われつつあります。
子どもも大人も、誰かのことではなく、自分たちのこととして考える経験を繰り返していくことが、そのことの解決だけではなく、他の生活にも良い影響が出ていくのではないかなと思いました。(中学校教員)
〇今回、学習会に参加して、「合理的配慮」について学ぶことができました。「共生」を前提にした考え方、そして、ユニバーサルデザインとの違いについて、きちんと理解できたことが一番の学びとなりました。
最後のA君のケースを考えたとき、「生徒に対してどうアプローチするのか」が、教員集団として、学校組織の一員として「誰と」考えていくかということと同じであるということを感じました。改めて、教師も独りで働いているわけではない(そう感じてはいけない)と、勇気をもらえた気がします。(中学校教員)