【報告】5・6月学習会(イエナプラン)

5・6月学習会報告

日時:2021年5月12日(水)・6月9日(水) 共に19:00~21:00(Zoomによる)
参加者:13名
内容:イエナプランを実践する学校の様子とディスカッション

 今回の学習会は、ドイツの教育者ペーターセンが唱えた“イエナプラン”について、オランダの実際の学校の様子を見ながら考えました。
 ペーターセンは、他人からの強制によって生み出される「よい行動」とは、子どもの人生・社会にとって意味のないものであるという立場をとりました。1920年代、画一一斉授業の課題を克服するため、「学校は知識を学ぶ場だけではなく、社会に出るための準備の場」という考えのもとイエナプラン教育は生まれました。
 イエナプラン教育には20の原則があり、一人ひとりの「自分らしく成長していく権利」を大切にし、誰しもがどんなときでも世界にたった一人しかいない人として大切にされなくてはいけないとしています。子どもたちはファミリーグループという異年齢学級で学校生活を送っています。「誰かが何かを知らないのは当たり前」の環境が日常に存在しており、子ども同士に序列がつくことがなく、強く意識することのない多様性が生活のベースとなっています。「子ども一人ひとりの違いがグループを豊かにしている。」という教師(グループリーダー)の言葉は、インクルーシブな教育を目指す上で力強いものでした。
 イエナプランの教育活動は、対話・遊び・仕事(学習)・催しという、4つの基本的な活動により展開されます。学習については、主体的に責任を持つという考えのもと、自分の時間割も生徒自身が作成し、誰からどうやって学習をするのかといった点についても子どもたちが考えます。自身の“経験に基づく学び”が重視され、“生きた世界の中での学び”と向き合う子どもたちは、とても前向きに充実した学びの中にいると感じました。

 ディスカッションの中では、「日本の公教育が会社に出るための準備の場であること」「(学校・教師が教え込むのではなく)もっと子を信じてよいのでは?」という発言が印象に残りました。今回のイエナプラン教育の学習会は、インクルーシブな教育を進めるヒント、インクルーシブな社会をつくるために必要なことは何かと深めるきっかけになりました。

【学習会の感想より】
◎一つは長い間移民を受け入れてきた歴史のあるオランダなんだと思いました
様々な人種や民族が暮らす国では、画一的な教育では無理なんだろうし、国民全体が多人種・多民族と共存できる下地があるのではないでしょうか。単一民族だと喜んでいる日本人とは大きくちがいます。
二つ目は教育の目標が誰もが「人」として位置づけられ、理想的な社会をめざすという理念には思わず「そうだ」とさけびました。しかし、ワールドオリエンテーションと教科学習とが相互に関係しあう構図は、日本でも戦前の教育の反省の上に登場した社会科の理念でもあったと思います。私に社会科とはを教えてくれた先生は「社会科は覚えたり暗記することではなく、みんなと考えあうこと」だと仰いました。社会科の目標は考える力。そのためには基礎学力として教科学習も徹底すべきだと。そうでなければ、単なる思い付き。私自身もそうした思いで実践してきました。
学校全体をイエナプランというのは、日本では不可能、何しろ馬鹿な権力が邪魔してるから。でも、学習指導要領などに惑わされず、教科学習の内容を検討してもよいのではないかと思いました。

◎今回学習会に参加して、イエナプランのことについて理解することができました。
私が特に印象的だったのが、「学校の役割を考える」ことや「自立」、「多様性を認める空間」ということでした。コロナ禍の状況下でどうしても教師主導になってしまうことも多い状況ではありますが、子供たちが常に当事者意識を持って関わっていけることが大事だなと改めて感じました。

◎学習会に参加して、イエナプランの具体的なことが理解できました。
現在、日本の学校教育では、「対話」や「協働」を意識した学習を目指していますが、はるか前からこれらを重視した教育活動がオランダで行われてきたことに驚きました。子どもたちが自分の意見を持ち、学ぶことを楽しんでいる姿にも驚きました。そして、日本の学校教育がいかに知識偏重であった(今も)のか、それを自分自身がしてきたことを振り返る機会となりました。これからの社会を生きる子どもたちに必要な力は何かと考えると、イエナプランによる教育で得られる力そのものではないかと思います。日本の現在の教育システムでは、100%イエナプランで教育をしていくことは難しいですが、今の教育の中に取り入れられる点はないのか、どのようにすれば少しでも近づくことができるのかを考えることはできるのではないかと思います。イエナプランの理念を理解して、できることを始めてみることが第一歩なのだと思います。私は学校現場で実践をすることはできませんが、今の仕事やEd.ベンチャー主催のエステレージャ☆ハッピー教室でできることは何かを考えてみたいと思います。
今日考えたイエナプラン教育は、学校や学級がインクルーシブになるためのヒントでもあり、インクルーシブな教育を理解することにもなりました。とても貴重な学習会になりました。
ありがとうございました。

◎今回の学習会では、“学ぶことを学ぶ”“学校は社会に出る準備の場”“保護者は教育の泉”“教員が発達できるか”“今の社会の問題を取り扱う”といったキーワードが心に残りました。
現在私が耳にする“多様性”という言葉は、「いろいろな人を認めようよ・理解してあげようよ」という少数者の言い分を受け止める(受け止めなきゃいけない)ときに使われている気がします。イエナプランでいう“多様性”は「多様性を認めることが戦略的に必須」という多様性を積極的に自分のものにしようとする“強さ”を感じる言葉であったように感じます。
総合学習や、生徒間の評価の重要性、保護者を教育に巻き込む考え方など、現在の日本(自分の学校)でも目指そうとしていることであり、今の学校現場で実践していることもあるのかとも思いました。分離教育を土壌とする(土壌となってしまった?)日本で、どれだけイエナプランの良さを取り込めるのか・・。日本なりのインクルーシブを見つける刺激になるビデオでした。ありがとうございました。

◎学校の先生方に向けたものかと思っていましたが、全然そんなことはなくて、
生活の中でも子どもたちに向き合うときに取り入れてみたい考え方がたくさんありました。学習のプランを自分で決めることで責任を持って学習をする、と聞いて、すごくいいなと思いました。ただ、私の周りにいる子どもたちは、まず学習への前向きな気持ちを持つところからだなあと…。そのためには、答え探しをするのではなく問うことを学ぶ、ことの繰り返しが必要なんだと、ビデオを見て感じました。自分で考えて行動していける力も、どうしたら身につけられるのか、ヒントがたくさんあったと思います。
また、感想とはズレてしまいますが、異年齢のグループの作り方、だんだんとグループリーダーは喋らなくなっていく(子どもたちだけで話し合ったり決めたりできる)こと、催しを通して獲得していくものがたくさんあること、など…今関わっている子どもたちの集団の中で、何か還元できるイメージがふわっとですが湧いていて…できることを具体的に考えてみたいと思っています。