ここでは、これまでにEd.ベンチャーの理事たちが推薦する本として取り上げた、女性に関する書籍を改めてご紹介します。今回紹介するのは、2016年2月に推薦された本です。
NHK「女性の貧困」取材班
『女性たちの貧困~新たな連鎖の衝撃~』
(幻冬舎 2014年)
この本は、NHK番組、クローズアップ現代『あしたが見えない~深刻化する若年女性の貧困~』、NHKスペシャル『調査報告~女性たちの貧困~“新たな連鎖”の衝撃~』の取材内容をまとめたものである。貧困な状況の中で生活する女性の実態が、インタビュー取材を通して紹介されている。
取材は若年女性へのインタビューから始まる。母子家庭で家事を担い家計を助けながら、アルバイトで進学費を捻出する十代女性や、四年制大学を卒業したが、就職難の中、非正規雇用で働かなければならず、奨学金の返済に苦しむ二十代女性などが登場する。彼女たちは、共通して「ただ普通に暮らしたい」と話す。
取材は、死別や離婚などによりシングルマザーとなった女性へと続く。そこから見えてくる結婚や育児、雇用の現実。そして浮かび上がってきたのは、親の世代の貧困が子どもへと連鎖していく問題である。それはネットカフェ家族の出現という「衝撃」として、象徴されることとなる。
本の中で登場する「シングルマザーは本人の責任」、「女性は結婚して男の稼ぎに頼ればいい」といった言葉は、私たちの身の回りでも聞こえてきそうである。しかし、登場する女性たちの現状を知り、また本の中で示される様々なデータを目にすれば、決して自己責任論で片付けることはできない。
番組キャスターの言葉を借りるが、「人生のスタート地点ともいえるときに、すでに夢や希望が失われる社会」が、今そこに存在するのだ。(I)