内 容 「母親を励ますことで、子どもを育てる ~生活綴方の実践を通して~ 」
(講師 伊藤久美子先生 埼玉県所沢市立宮前小学校 )
日 時 2017年9月2日(土)14:00~16:00
場 所 大和市文化創造拠点シリウス603号室 参加者9名
9月の理論学習会では、伊藤久美子先生を講師としてお招きし、先生が小学生の男の子を担任した時の『記録』をもとに、生活綴方の実践をお話していただいた。周辺の子とは違った行動をする男の子の子育てに悩むお母さんと綴った5冊にもわたる連絡帳がその『記録』である。
伊藤先生の生活綴方の実践からは2つの変化を見ることができた。1つは教師が寄り添い、励まし続けることにより前向きになっていったお母さんの姿。そしてもう一つは、男の子が自分の言葉で表現することができるようになっていった姿である。
その背景には、先生がお母さんを毎日のように励まし続ける言葉、子どもを見守る温かい言葉であふれていた。教室の中で乱暴な行動に出たり、自分の髪の毛を切ってしまったり、いろいろな行動をしていた児童が『言葉』を獲得することで、自分の気持ちを表現できるようになり、お母さんを悩ませていた行動も少なくなっていった。
『言葉』の獲得には伊藤先生の丁寧な取り組みがあり、「書いてあげるから言ってごらん」と、その児童の気持ちの表現を出すということから少しずつ自分の言葉として書くことを覚えていった。彼は「それまでつらいこと、悲しいこと、くやしいことは、きっと、心の奥にしまって出さなかったのだろう」、「出せなかったから勝手な行動に表れた」と先生は語った。実際に、自分の思いを出すことができるようになってからは、彼の行動は落ち着いていった。
先生は、困っているお母さんに対して「(先生が)困ったことは書かなかった」と言う。そのお母さんがどれだけ大変な状況の中で子育てをしてきたか、そして、どれだけつらい思いをしてきたか、それを先生は知っていたし、これ以上お母さんを責めることをしなかったのだと思う。それよりも先生が選択したのは、一文字一文字、言葉でお母さんに寄り添い続けることだった。
「母親を応援することがその子を育てることに繋がった一年だった」と先生は語っている。この『記録』の中でお母さんの「今は子育てを楽しめるようになった」という言葉が印象に残った。伊藤先生の実践はとても心温まるものであり、教師ができることの可能性を教えていただいた学習会だった。
参加者の感想(一部)
学習会に参加できて、本当に良かったです。自分なりには子どもたちや親の気持ちに寄り添って、実践してきたつもりですが、今日の伊藤先生や佐藤先生のお話でまだまだだと実感しました。信頼関係を築くことが、自分のことを語り始めることにつながるのだと痛感しました。寺子屋に集う子どもたちとも、こういうつながりを大事にしたいと思いました。(元小学校教師)
伊藤先生とT君のお母さんとのやり取り、またお母さん、Tくん2人の成長のお話、とても感動しました。また、伊藤先生の保護者、子どもとの向き合い方、とても勉強になりました。私も少しでも子ども、そして保護者に寄り添える教員を目指して子ども・保護者と向き合って行きたいと思いました。(中学校教師)
本当に感動しました。お母さんにとって本当につらい時期に伊藤先生のひと言ひと言でたくさんたくさん救われたんだろうな、と実践を聞いて思いました。(経済的・社会的)貧困からくるお母さんのつらさと先生の言葉から伝わるあたたかさを想像し、何度も胸が熱くなりました。自分を語ること、綴ること、記録すること、その大きな意味をとても感じました。ありがとうございました。(中学校教師)