教育ボランティア

 またまた更新が滞っております。気がつけば10月も半ば。今年度も残すところ2ヶ月半です・・・。
 今回は「教育ボランティア」の事業についてご紹介します。


今月に入って公立中学校からこの「教育ボランティア」の依頼があり、先週一週間、その中学校に支援に入りました。依頼内容はベトナムから来た中学生の編入に当たって、初日から一週間、母国語の話せるスタッフと事務局とで、授業への入り込み支援でした。とにかく当該生徒にとっては、日本語も日本の学校についてもすべてが初めてのことで右も左も分からないのですから、不安は大変なものと端で見ていても感じます。いま何が話されているのか、クラスの周りの生徒の反応の意味、学校の一日の流れなど、日本で生まれ育っていれば本人も親御さんも当たり前で説明も必要ないことについて説明しながら、一週間をつきあいました。母国語のスタッフは大変だったと思います。
 私自身は母国語が分かりませんので、当該生徒の様子で気になることを先生や周りの生徒に気づかせて教室の中での位置づけをはかるということを中心に行いました。先生方も生徒も言葉の分からない生徒を受け入れるのが初めてと言うこともあり、緊張していましたが、どうすればその生徒をクラスの一員として迎え入れ、位置づけることができるのか、それぞれに一生懸命考えていた感じでした。当初は一週間の支援ということしか決まっていませんでしたが、検討の結果、継続的に様子を見ながら支援に入ることになりました。
 「教育ボランティア」の事業は、学校や先生が「支援が必要」と考えるものに応じる、という非常に広い範囲を想定したものなのですが、現在までに対応した依頼内容は、今回と同じように、他の国から直接日本の学校に編入してくる言葉の分からない外国人の子どもの支援でした。Ed.ベンチャーの「独立経営」を原則とした各事業の中で、「教育ボランティア」に関しては担当を固定せず、依頼があれば必ず必要と思われる役員やスタッフを集めて、対応を検討する「組織対応」を行っています。そこには学校の教師、研究者、私のような地域の実践者、そして外国人当事者も参加し、それぞれの角度から学校や子どもの様子を分析して検討を行うわけです。「持てる力を結集して必要なところに再分配する」というEd.ベンチャーの活動理念の一つの形がそこにはあります。
 そんな中で外国人児童生徒の支援に関しては、「支援者が抱え込んで支援する」のではなく、「周りとつなげていく」という考え方を原則とする方針が決まってきています。なので、支援の形は「取り出し」による個別支援と言うよりは、入り込みによる支援が多くなっています。さらに、当初の依頼は特に国際教室のない学校からのものが多かったので、外国人の受け入れ経験が少ない学校や教師が、どのように外国人児童生徒を受け入れていくのがよいのかという経験知を他の学校や教職員の方も参照できるよう、「国際教室マニュアル」の企画作成にも結びつきました。このマニュアルは無料で配布可能ですので、ご入り用の方がいらっしゃいましたら事務局までご一報下さい。
 今回の依頼で教師ではない私が一週間学校に入ってみて感じた一番のことは、先生方も、子どもたちも「忙しそう」ということでした。一日を時間割通りにすすめること、その中で先生は教科の時間数を気にしながら授業を進めたり、学校行事にあわせてクラス運営を考えなくてはならなかったり。子どもたちも学習だけではなく割り当てられた係の仕事を時間通りに進めなくてはならなかったり。子どもたちは慣れてしまえば毎日を「こなす」ことができるようになりますが、立ち止まってその活動の意味、学習の意味を考え直す時間はないのではないか、そんな中外国人の子どもたちにとっては、学校での毎日は意味も分からずとにかく怒濤のように過ぎて行くだけなのではないか、そんなことを感じました。単に日本語を教える、学習を支援する、日本の学校に慣れる、といった「適応」を支援するだけではなく、今の経験は日本の中ではどんな意味を持ち、外国人としてはどんな意味を持つのかといったことを意識しながら、学校で起こる一つ一つのことに「つきあっていく」こと、その中で教師や周りの生徒がちょっと立ち止まって学校の今を見つめ、学校の可能性を拓いていくことをお手伝いできればいいなあと思っています。