11月17日に理論学習会・ママパパの会合同の学習会を開催いたしました
講演会「子どもの貧困と乳幼児期における支援」
講師 川松亮氏 (子どもの虹情報研修センター研究部長)
日時 2018年 11月17日(月)13:30~15:00
場所 富士見会館
参加者 13名(参加者8名+保育バイト1名+参加者家族1名+子ども3名)
今回の公演は、義務教育以前の貧困家庭の状況と、そこから読み取れる社会状況、貧困を抱える家族や子どもへの支援の在り方という内容であった。
講師の川松氏は、児童相談所で働いてきた経験をもつ。そこでの様々な家庭との出会い、子ども達への思いを交えながら、貧困家庭を取り巻く諸問題についてお話してくれた。
所得再分配機能の弱い日本において、特に一人親世帯は大変厳しい状況にある。多くの場合は収入が低い非正規労働者である。社会が個人や家族を支える役目を果たさないため、親せきや友達など支えてくれるような人間関係がない場合は、生活基盤が安定しない。
児童相談所にやってくる虐待されている子どもの多くは、親の心身の不安や経済的困窮、一人親世帯であるという。貧困と孤立の問題は大きくなっているが、そのような家庭ほど人や支援とつながりにくい実態がある。困難があってもサポートがあれば何とかなるが、社会サービスの不足と、数少ない社会サービスの認知が低いことから支援の場にあがらない。そこで、就学前の早い段階で福祉とつながれるように、地域に子育て支援の拠点を作ったり、学校の中に行政の福祉窓口があったりしてもいいのではないかと川松氏は言う。
貧困の連鎖を止める要因として、親や子どもにとって安心できる居場所があること、安定した生活基盤をもてる雇用があること、地域資源を豊富にすること、などがある。海外の例として、カナダでは小学校区に一つは子育て拠点があり、そこが家庭の困り感の発見と支援へつなぐ役割を果たしているそうだ。
最後に、所得保障と具体的な援助の必要性、家族を支える施策と子どもを直接支える施策の両面の必要性、すべての人に開かれた支援と個人に焦点を当てた支援の両面の必要性、そしてそれらが横につながるセクションの必要性についてお話がされた。
保育園や幼稚園から小学校に上がるとき、支援が途切れることが多いという。学校は家庭と距離があり、多くの事を家庭の力を前提として進めていく。しかし、貧困を抱える家庭に対し、一歩踏み込み、まずは気づくこと、つながることをあきらめないことから始めるしかないと感じた。参加者からは、最近は精神的な問題を抱える保護者への対応に多くの時間を要するといった話があがった。子どもの教育以前に、その保護者を受け入れ、話をきき、支援機関につなぐといったことがよくあるケースとなっている。教員自身が社会背景とその家庭の置かれた状況をよみとる知識と感覚を身につけ、様々な人や機関と連携していくことの重要性を今回の講演会で学ぶことができた。
【参加者の感想】
子育て中の小学校教員です。育休中は自分から子育てセンターや支援拠点に出かけ、どうにかノイローゼを避けて来ることができました。仕事に復帰し、住む場所も変わり、自分の子育て、自分の安心できる居場所を探すことに苦労しました。自分から求めることができた私でさえ「知らない、つながれない」親たちの辛さは、はかり知れないものだと想像できます。
学校として、情報提供できるだけしていきたいと思いますが、やはり支援の場所が身近にあるというのは大きいと感じます。先生もおっしゃっていたように、学区に一つ、教育、福祉、医療(行政?)があり、どれもハードルの低い認知度の高い(高くする…)つながりのものがあるといいなぁ…と思うばかりです。(小学校教員)
保育所で働いていましたが、保護者に対して地域で使える支援などの情報を知る機会がなかったので、色々な情報を知って伝えていくことが大切だと思いました。ありがとうございました。(元保育士)
学校現場の実感としては、「教育」「福祉」プラス「医療」とつながれればと思っています。なかなか難しいのですが…。(中学校教員)
貧困の現状は聞いたことはあっても、背景や具体的なことについて調べてみたことがなかったので、今日詳しく知れて良かったです。学校として個人に踏みこんで対応することはなかなか難しいことですが、まずは気になる子に気付くこと、その子の背景を知ること、気持ちを聞くことから始めて貧困の子に関わっていけたらと思います。ありがとうございました。(小学校教員)
様々なお話やデータから貧困を抱える子ども・家庭の実態を知ることができました。特に母子家庭の生活が苦しいというのは今までの経験から実感するところがあります。気付き、支援につなげられるよう、子どもを見る目をとぎすませていきたいと思いました。(小学校教員)