理論学習会担当として2012年に学習を進めていく中で、若い先生が教育界の歴史をよく知らないという事が分かりました。そこで今を読み解くために理論と現状をつなげてみていこうという試みをもち、2013年は「理論学習会序説」と銘打ち、連続講座を開催しました。
4月の理論学習会は、日本女子大学の清水睦美先生を講師としてお迎えし、「いじめ」をテーマとして講義していただきました。第一回目は、主にいじめの構造変化を時代の流れを追いながら、第二回目は教室内でいじめが起こるときに教師の価値観がどのように働いているのか、をお話しいただきました。清水先生には何度も「いじめ」をテーマにお話しいただいていますが、毎回内容が異なるのは、やはり時代の流れによっていじめの構造も日々変わっていくからであることを改めて感じました。
いじめの構造が、いじめ・いじめられるという上下関係の固定からフラットな人間関係へと変化した一方、ぶつからないようにするのが大事であるという考えもあり、実際にはフラットになりきれない支配的な優劣をつけるムードがあることで、いじめ衝動が発生するということ、また心理主義の浸透によって、「治療的」やさしさから、「予防的」やさしさが重視され、自己コントロールを強要する風潮があることも知りました。
講義のなかで一番印象に残ったのは、教室内にいじめが起こる時、教師の価値観が多分に関係しているということです。質疑応答の場面で参加者の先生から若い先生に対して痛烈な一言が飛びました。「最近の若い教師はどのような価値観をもっているのか、そもそも価値観すらもっていないのではないか」という言葉です。学校では当たり前のように使っている「クラスでまとまろう」「みんなで頑張ろう」という言葉が雰囲気の一元化をつくり出していることや、一元化によってヴァルネラヴィティ(弱さ)が際だち、いじめを引き起こしていく原因になっていくことを学んだ今、教師がヴァルネラヴィティに対してどの立ち位置で臨むかが問われていることを強く感じる内容でした。