2019年度理論学習会総括

【2019年度 理論学習会総括】
 本年度も「貧困と教育」をテーマに学習会を展開した。昨年度までの学習会で、貧困の中にいる子どもや家庭は人や制度、機関との「つながり」を持つことが難しいということがわかった。これまでは子どもへの支援に焦点をあてていたが、その課題は家庭の中の「大変さ」でもあった。その背景から、家庭を支える方法としてどのような可能性があるのか、また、学校でその機関と家庭をつなげるための知識を教員が持つことが必要なのではないかという視点から、学習会の内容をこれまでの知識と合わせ、より視野を広げる内容を設定した。4年間にわたり「貧困と教育」をテーマにしてきたが、今年度は理論としての「貧困」を捉える学習会とともに、「つながり」を意識した子ども達同士の関わり合いをつくる実践報告の形式で学習会を行った。
 教育現場の今を見据える力を養うことは重要であると考え、前半の学習会では、大学講師を招いての学級集団を構造的に捉えるための学習会、授業研究会との共同開催で行った小・中学校での子どもたちの「つながり」を意識した授業の実践報告会、産休・育休・働くママパパのための学習会と共同開催したスクールソーシャルワーカーを講師に招いた学習会を開催した。目の前にいる子どもたちやその家庭に対し、教育現場からできる支援を知ることができた。これらの学習会で見えてきたことは、教員が声にならない子どもたちの声を聞こうとすることだった。そして、教員ができることは、排除される、取りこぼされようとする子どもたちが、学校の中で「人とのつながり」をつくるこということだった。
 後半の学習会では、若者の奨学金問題を支援する弁護士の活動や、国の制度である社会保障にその枠を広げ、「制度や機関とつなげる」知識をつけるための内容を展開した。昨年度は生活保護に焦点を当てた学習会を設定したが、今年度は生活保護に限定しない社会保障制度について知ることや、奨学金についても取り上げた。貧困の中にいる子どもたちには「学費」も大きな壁となる。義務教育を終え、社会に出ていく子どもたちに、貧困に立ち向かう力の育成、支援の手を持つための「つながり」をつくることが貧困の連鎖を断ち切る術のひとつであることも学ぶことができた。 
 今年度の学習会を進めていく中で、私たち教員がつけた知識を教育現場でどのように実践していけるのかという課題も見えた。実践していくためには、社会保障・生活保護・奨学金制度の問題など社会の今を捉え続け、子どもが貧困に立ち向かうためにつける力を考えていく必要がある。また、子どもやその家庭に寄り添いながら制度や機関と「つながり」をつくることもそのひとつであるということがわかった。

【活動代表】馬場有希・根岸知世

【内容・日時・場所】
第1回:4月22日(月) 講演会「学級づくりの基本~教室での教師と子どもの関係~」
講師:清水 睦美氏(日本女子大学 教授)
場所:大和市シリウス603中会議室

第2回:5月13日(月) 授業実践報告会「クラスづくりと国語の授業」(授業研究会との共催)
実践報告:山崎 正氏(小学校教諭)・ 飯田 里沙氏(中学校教諭)
場所:大和市シリウス603中会議室

第3回:6月23日(日) 講演「SSWの視点から考える学びの環境づくり~組織的な取り組みの可能性~」(ママパパのための学習会と共催)
講師:上原 樹氏(大和市青少年相談室SSW)
場所:大和市シリウス612文化創造室・会議室

第4回:7月1日(月) 実践報告「題材から授業をつくる」(授業研究会との共同開催)
授業実践報告:馬場有希氏(小学校教諭)
場所:大和市シリウス608和室

第5回:9月2日(月) 文献講読会 テーマ:『性の多様性を考える』
場所:大和市シリウス603中会議室

第6回:10月7日(月) 講演会「奨学金問題からみえる子どもたちの学びの現状」
講師:田原 恵氏(神奈川県弁護士会 弁護士)
場所:大和市シリウス603中会議室

第7回:11月11日(月) 講演会「生活保護から社会保障制度を考える~今とこれからをどう生きるか~」
講師:今井 伸氏(十文字学園女子大学人間生活学部人間福祉学科 教授)
場所:大和市シリウス603中会議室

(全7回。のべ参加人数61名)