2020年度理論学習会総括

【事業総括】
 今年度は、コロナの影響で学校がこれまで抱えていた課題がより目に見える形となった。現場で教員が目の前に突き付けられた課題を整理したり、多角的な視点で学校や子どもの育ちを考えたりする機会として本学習会が機能した一年であった。
 緊急事態宣言下では、開催をオンラインに切り替えた。その後、より多様な参加の仕方を模索し、会場を借りてスクリーンを設置し、ライブ中継をして開催した。直接会場に来たい人も、子どもがいたり体調に不安があったりして自宅から参加したい人、他地域の人も含みこんで一つの空間で議論ができた。参加者の層が広がったので、この同時開催の有効性を感じた。機材の設置など大変に思えたが、実際やってみることでハードルが下がり、運営側としては出来ることが増えてよかった。また、コロナでそれぞれの参加者がもつ危機感が可視化され、話したいという思いをもって参加される方が多く、学校の現状について情報交換したり、悩みを話したりする場にもなっていた。多忙な中だからこそ、改めて時間をとって現状を確認し合う場の必要性を感じた。
 事業目標に加えて、実践につながることを意識した全4回の学習会では、教員からの実践報告と事例報告、さらに教育学と社会福祉の専門の先生の講演を組み込んだ。理論的な話から現場の具体に落として考えたり、事例に対して専門的な知識を得てアプローチを考えたりすることができた。
 参加者との議論の中で、競争的なシステムの中で過ごすことを強いられている子どもたちにとって、不利な立場にある子どもはさらに不利な立場に追いやられていく現状が見えてきた。そのことに気づいたとき、現場で教員は誰に寄り添い何をどう導くのか、どこに向かって何を発信することができるのか、という課題が立った。担任として教室を包括的にとらえる視点、子ども個人の背景を分析する視点、現在の社会構造と関連させる視点、授業の中に仕組みをつくる視点、縦割りではなく他機関とつながる視点、はざまにあるものに目を向ける視点などなど、様々な意見が出てきた。色々な立場の人と意見を交えることで、学校の特殊性が明らかになった部分もあるだろう。本学習会のベースにある「教育と貧困」の問題は、格差が広がる社会の中で容認されつつある空気すら感じる。だからこそ、これをテーマに声を上げていく必要があると考えている。学んだことを他の場面で使うことができれば、教育現場においても、これまでとは異なる展開の可能性もあるはずであり、本年度は実践につながる現実的な取り組みにつなげられる機会となった。
 コロナの影響で保護司の方にお話を頂くことが叶わなかったので、今後の学習会にて開催出来たらと考えている。

【活動代表】清水美希・馬場有希

【内容・日時・場所】
第1回:5月13日(水)19時~21時
学級づくり~子どもが育つ集団をつくる~
講師:清水睦美氏(日本女子大学教授) 
場所:オンライン(Zoom)  参加人数:16名

第2回:6月6日(土)13時~15時
支援が必要な子、弱い立場の子を周りの子との関わりの中で育む
報告:岡部千春氏(大和市立上和田小学校教授)
場所:オンライン(Zoom)  参加人数:17名

第3回:10月7日(水)19時~21時
報告・座談会「『今』の学校、どうなっているの?」
報告:大和市内小・中学校教員
場所:大和市シリウス610&オンライン(Zoom)
参加者:10名

第4回:11月4日(水)19時~21時
事例検討会「人と制度、機関をつなげる実践」
報告:大和市内中学校教員
講師:今井伸氏(十文字学園女子大学教授)
場所:大和市文化創造拠点シリウス610&オンライン(Zoom)
参加者:15名(会場11名、オンライン4名)

(全4回。のべ参加者数58名)