11月『ゆっくり小学校』

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辻 信一著『ゆっくり小学校 学びをほどき、編みなおす』(素敬SOKEIパブリッシング 2015年)

 現在、教育現場で働いているが、毎日がせわしなく過ぎている。事務作業のみならず外国語や図書指導などの授業時数確保や、子どもたちの下校さえも急いで帰さなければならない。仕事をしている一日を一言でいうと「あっという間」である。正直なところ、子どもと接しているときは時間を考えずに長い時間話していたいと心から思う。今回推薦する本は、そんな毎日を見方や考え方を変えていきたいというものである。そもそも「ゆっくり小学校」というタイトルのような小学校はないが、忙しくする時間の中で学んでいくのではなく、自由と時間とのつながりを学びなおす場所を大切にしていきたいというメッセージが込められている。
 現代の社会経済は「より大きく・より多く・より遠く」に重点が置かれていると本書で示唆されているが、この歯車が回り続ける限り社会経済はより一層発展していくと考える。一方で自然界のものの大きさにはある程度の限界が存在するため、バランスの取れた世界がある。経済が発展していくということはより急ぎ、よりはやく仕事をこなしていくことになる。そんな世の中へ子どもたちを送り出そうとしていると思うとゾッとする。「もっともっと」と求めすぎるのではなく、人間の規模にあった小ささの中で活動していくことが重要だと考える。
 また見方によっては違う世界が見えることもある。本文で『星の王子さま』の内容が記載されており、そこで作者は「時間をムダにすることは、効率性、合目的性などの要請から自由に、自分の時間を過ごし、自分の人生を生きること」と述べている。確かに、時間を効率的に使おうとすると縛られた中でしか活動できないような気もする。ただ、仕事に置き換えて考えてみると、ゆっくり時間をかけて仕事をしていると帰るのが遅くなり、睡眠時間も短くなってしまう。その疲れた状態から朝を迎え子どもたちと授業をするとなると、子ども達に申し訳ない気持ちになる。時間をかけて取り組んでいきたい気持ちはあるが実際は..ともどかしくなる。そう考えると子どもに直接かかわる部分には時間をかけ、それ以外には時間を短くし効率的にことを進めることが大切だと考える。
 本文の後半では、「『所有』より『分かち合い』、『得ること』より『与えること』に幸福があるという感覚が生きているのは、先進国よりも途上国、都会よりも田舎、金持ちよりも貧しい人々の方」だと述べていて、それに納得した。理由としては、私自身何か新しいものを手に入れるともっと良い新しいものを欲してしまうことがあるからである。しかし、貧しいと呼ばれる人たちは必要なことをそれ以上求めていないだけのことかもしれないと感じた。
 社会状況からものごとを考え、そこからゆっくり時間をかけて学んでいく大切さを本書から見つけることができた。時間に追われているときに、時間をかけて読んでほしい1冊である。(BT)