学校に行きたくない君へ 他

理事推薦本
 私は中学校で働いています。新型コロナウイルス感染拡大防止のために、学校が休校になって3カ月になろうとしています。この3か月間の勤務をふまえて、今回、次の2冊の本を推薦したいと思います。
 まず、1冊目は 全国不登校新聞社編『学校に行きたくない君へ』(ポプラ社 2018年)です。
 これは、不登校新聞という不登校専門紙に掲載されたインタビュー記事のまとめです。不登校について、いろいろな立場の人が考えを披露しています。不登校の状況に働きかけるアプローチ以前の状況をどう見るかについて書かれた本です。


全国不登校新聞社編
『学校に行きたくない君へ 大先輩たちが語る生き方のヒント』
(ポプラ社 2018年)

 そしてもう1冊は、加藤彰彦著『貧困児童―子どもの貧困からの脱出』(創英社/三省堂書店 2016年)です。この本は、貧困によって子どもの将来の可能性が奪われているのに、社会がなにもしないのは、それは社会がネグレクトしていることと同じではないか。この問いに答えていこうとする本です。沖縄の貧困対策モデルについても書かれています。


加藤彰彦著
『貧困児童-子どもの貧困からの脱出』
(創英社/三省堂書店 2016年)

 学校が休校になって3か月間、私が勤務する中学校では、教材受け渡し日や教育相談(個別面談)日を設けたり、電話で様子を聞いたりしていますが、それが果たして子どもたちの学習支援に役立っているのか? 疑問や不安や悩みなどを持った子どもたちに、時期を逃さず、ていねいに対応できているのか? と問われると、とても自信がなく、子どものことは家庭に任せっぱなしというのが実態です。
 生徒のいない学校では、昨年度まで中学校で行動上の課題が表れていた生徒の指導について、学校が通常の運営をしていた時期に比べて、ていねいに当たることができています。例えば、昨年度、不登校だった子どもが定期的に誰もいない校舎に安心して入ることができています。また、外部機関と担当者が頻繁に連絡を取ることが可能になり、家族支援と連携した教育活動(個別学習&教育相談という形ではありますが)が充実してきています。
 これらの例からわかることは、ふだんの学校運営では、周辺に置かれ、充分な学校からの教育エネルギー(?)を受けてこなかった子どもたちに、力を注げている実態があるということです。それは、教員の職務が学校再開後に向けた授業準備と毎日の課題準備と点検に注力できることで、生徒個々の状況に配慮したりする余裕が生まれている実態があるということです。
 あれこれ書いてきましたが、通常のGW明けには5月病とも言われる環境への適応の問題が起きていました。長期休業後に子どもたちには、どんな世界が待っているのでしょう。学校生活上の制約は、感染拡大防止のもとに確実に増えていくでしょう。心配しています。
 この時期だから、以上の2つの本を推薦しました。子どもの近くにいる人たちに、こういう視点もあるのだと、再確認してもらうために。(MM)