校則なくした中学校

理事推薦本
西郷孝彦 著 
『校則なくした中学校 たったひとつの校長ルール:
定期テストも制服も、いじめも不登校もない!笑顔あふれる学び舎はこうしてつくられた』
(小学館 2019年)

 「すべての子どもたちが3年間を楽しく、幸せに過ごせるにはどうすればいいか」・・。

 このことを突きつめた中学校があります。東京都世田谷区立桜丘中学校には、校則、宿題、定期テスト、チャイム‥学校であれば当然のようにそこにある、あらゆるものがありません。にも関わらず、不登校の生徒もいじめもこの中学校にはない。読み進めていくうちに、不必要なルールがないから、子どもたちがのびのび過ごすことができるのだと気が付きます。

 教師に憧れ、教職に就き学校現場で働き始めて9年目。「子どもたちを育てるため」「社会に出ていく子どもたちの力を伸ばすため」にあるはずの学校が、今のままで本当に良いのかと考えさせられました。
 筆者である西郷先生は、自ら育とうとする力を持っている子どもたちにとって、大人ができることはその環境を作り、ありのままの子どもたちを信じて受け止めることだけであると語ります。教職員がありのままの姿で子どもと向き合うことが一番であり、目の前の一人ひとりの子どもたちから教師も学ぶ。
 学校現場の多忙化やいたずらに“働き方改革”が叫ばれ、心身を壊し疲弊した同僚や学校組織も見てきました。そんな中、「目の前の子どもたちのためにできることをする」という、教師を志した一番最初のきっかけを思い出させてくれた本書。

 学校がすべての子どもたちの居場所であること。学校が、これから社会に出て自分たちの力で未来を切り開く力を身に付けられる場であること。その実現のためのヒントが詰まっています。学校で日々、子どもたちと関わる全ての先生方に読んでほしい一冊です。(MH)