新・韓国現代史

理事推薦本
文 京洙 著
『新・韓国現代史』
(岩波新書、2015年)

 近くて遠い国と言われていた韓国は、韓流ドラマ人気で、研究者が「50年かかっても越えられない」と嘆いていた壁をドラマファンのおばさんたちは、あっという間に超えて、今や身近な国になった。しかし過去の歴史を度外視した感覚は、事あるごとにヘイトスピーチ等々様々な軋轢を生んでいる。政治的に何かあると「遠くなってしまったなあ」と感じるのは残念でならない。とかく日本人は欧米には関心もあり、卑屈なほど親しみを感じている。それに引き換え中国、韓国、北朝鮮となると軽蔑の対象でしかない。遅れているとか貧しいからという感覚が抜けない。歴史的には東アジアの中で日本が一番後進国だったのに。
 日本は一貫して自国の歴史を都合よく歪曲化し、真実と向き合うことをしてこなかった。まして近隣の国の歴史など無視し伝えることもしなかった。結局いつまでも歴史認識の問題が足枷となっている。せめて、隣の朝鮮半島の歴史だけでも正しく認識しなければと思う。
 作者は東京生まれの在日朝鮮人。立命館大学教授で国際関係論が専門の方。
 この本は日本の敗戦による解放から、朴槿恵政権までを内容としている。朝鮮戦争・光州事件といっても名称だけで、私達は詳しいことを殆ど知らない。セウォル号沈没事故の時、日本からも救助の申し入れをし、もし救助に関われば90%助けられたといわれているが、朴槿恵政権は頑なに拒んだのは何故か。日韓条約は勿論のこと、様々な場面で日本は韓国と関わっている。私達にとっても無関心ではいられないことばかりである。
私は個人的に歴史が好きで何事も歴史的にはどうだったのかに興味がある。過去を考察することで、何故現在こうなるのかが分かるからだ。この本は解放後の韓国史だが、互いの歴史を理解することで、正しい一歩を踏み出し、未来に向けてより良い関係を構築できればと願っている。そのためにも一読を薦めたい。
 できれば、日本の侵略と、植民地支配の歴史も知って欲しいと思っている。私達は日本人であることで、たとえ侵略や危害を与えなくても歴史的責任があることを忘れてはならないからだ。(T.T)