11・12月 高校進学に向けて

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「先生が一緒に行ってくれると嬉しいんだけど・・・」

 中学校3年生はそろそろ高校進学を具体的に検討する時期になりました。教室に通う中学校3年生のうち、同じ学校のA君とB君のふたりは工業高校への進学を考えているようでした。
 11月上旬、A君から連絡がありました。
「今度、進学を考えている工業高校の学校説明会があるのだが、当日は母親は仕事があって付き添ってもらうことができない。先生が一緒に行ってくれると嬉しいんだけど・・・」というものでした。
 もちろん二つ返事で付き添いを引き受けることにしました。
 進学を考えている高校の学校説明会に参加するのは、日本人が考えている以上に外国籍の子どもたちにとっては重要です。学校のパンフレットに掲載されている日本語を読んでイメージするよりは、直接肌で学校の雰囲気を感じ取ることができるためです。また通学するのにどのような経路をとればよいのか、時間とお金はどれくらいかかるのか、といったことも確かめることができます。A君と相談して、説明会にはB君も一緒に参加することにしました。
 説明会には多くの子どもたちと保護者が参加していました。一旦体育館の中に集められ、希望する科ごとに分かれ、その中でもさらに10人ほどのグループに分かれて、現役の高校生が校内を案内してくれるというものでした。A君は機械科のグループに向かいました。製図室で高校生が実際に製図板に向かって製図している姿、PC室でCADを操っている姿、工場で旋盤やフライス版を操作して金属加工に取り組む様子、バーナーを手に持って溶接を学んでいる姿など、実際の学びの様子を目の当たりにしたA君はいつにもまして楽しそうで、目が輝いています。
 見学している最中に、高校の先生からは進路に関する簡単な説明がありました。
 目下工業高校には多くの求人があり、就職に困ることはまずない。専門学校や大学に進学するよりもメリットは大きい、といった趣旨の説明をする先生の自信のある表情がとても印象的でした。確かに、大学に進学したものの、就職の段階で躓く学生は少なくありません。特に外国にルーツを持つ子どもたちにとっては、職業科の高校に見られるような手厚い就職指導は大きな魅力です。工業高校であれば製造業等で活かせる技術を身につけることもできるでしょう。家庭のこと、経済的負担のことなども考慮すると、この高校への進学は大変魅力的です。
 学校見学会は校内の施設を一通り見学した後、もう一度体育館に集合し、生徒たちによる各科の説明を聞いて終了となりました。帰りの電車の中ではA君もB君も進学のことについて様々な話を口にしました。学校生活だけではなく、通学のこと、部活のこと、お金のこと、その先の就職のこと。様々な不安と期待を口にしながら、自分の理想と現実を、かれらなりに冷静に分析し、真剣に考えている様子がうかがえます。
 結局、その後様々な事情を検討した結果、A君もB君も今回見学した高校を受験するということには至りませんでした。しかしかれらが高校進学に向けて真剣に考え取り組んでいる姿勢に変わりはありません。
 その姿勢が見られたのが、12月末に開催された「すたんどばいみー」主催の勉強合宿にふたりが参加したときのことでした。合宿に参加した子どもたちの数が全体として少なかったということもあるのかもしれませんが、「ほら、勉強しようよ」と直接促すことがまったくなかったことに、私自身驚かされました。そしてA君、B君ふたりとも真剣に学習に取り組んでいたのです。
 合宿では教科の学習だけでなく、面接練習も行います。入室の際のお辞儀の仕方、声の出し方、質問への対応も含めて、一挙手一投足を細かくチェックします。「そんなことまで」と思えるほど細かいところまでチェックしておかないと、「入試」という試合において日本人生徒に太刀打ちできません。ふたりとも恥ずかしさに照れ笑いを浮かべながら、楽しくしかし真剣に面接練習にも取り組みました。
 外国にルーツを持つ子どもにとって、高校進学は日本社会の様々な現実に直面する大きな関門のひとつです。かれらが思い描く将来像をかれらなりに実現することに、どれだけの力添えができるか分かりませんが、支援を続けることで、少しでもかれらの将来が明るく希望に満ちたものになるよう願うばかりです。かれらの姿勢と願いが真摯なものであるだけに、より一層そうした思いが募ります。(TH)