【報告】10月事例研究会

事例研究会は、外国にルーツを持つ子どもたちの具体的な事例を通して、彼らの背景にある事情や問題を読み解く力をつけていくというねらいで開催しています。

日時:2021年10月27日(水)

事例提供:大和市中学校教諭 平石 孝太先生

参加者:6名

 平石先生からは、天真爛漫な気質と臆病な気質が同居する外国にルーツを持つ子どもの事例が紹介されました。明るく優しい性格で、好きな先生や好きな友達に対して気配りをする面と心配事に対して見通しを立てることができないために不安で固まってしまう面とを持つ、家庭ではヤングケアラーという立場にあり、家族の健康面ではヤングケアラーとしてうまくいかないことに直面して精神的に不安定な時がある、本人自身も健康面での不安を抱えている、さらに素っ頓狂なことをいうキャラとして浮いてしまうようなところがあるが本人は気にしている様子はないのに自分の好きなアイドルを馬鹿にされるとが逆上するところがあるというAさんについての報告がありました。そして、教師として生きる力を指導するとともに悩みを相談できる窓口となる人を複数作ることが必要ではないか、保護者のルーツを知ることで保護者への助言の内容や伝え方がかわってくるのではないかといった話題提供がありました。

 協議の中で、参加者やアドバイザーの先生からは、Aさんの学校での集団の位置取りを気にして見ていく必要があること、Aさんは自尊感情や自己肯定感が低くアイドルはAさんの代理の存在であること、教育の営みはその子の世界を広げることであるがAさんにはぶつかることも含めて周りと関心、怒り、喜びの共有がないのではないかということ、つながり・社会関係資本を作ること、つながる練習が必要であること、母のルーツはAさんにとって必要であるが、Aさんの場合先生が母にルーツを聞くことで(言葉の問題もあり)母子を分断させることになる懸念もあるので、Aさんと話す中で母とつなげていくやり方のほうがよいのではないかということ、Aさんのようにエネルギーを持ち得ていない子ども、自己肯定感が持てない子どもにはエネルギーが出てくるまで異質の人と出会わせるべきではなく、まずはAさんとAさんが一緒にいる子どもの話を聞いて大人が寄り添うことが必要であることといったアドバイスが出ました。さらに、学校という場が人との出会いを作り出す場になることが必要であるといったことも話題としてあがりました

 これらのアドバイスをもとに、Aさんへの支援を続けていき、1ヶ月間の取り組みの様子を次回(11月)の事例研究会で報告していただくことになりました。参加者は多くありませんでしたが、実践につながる研究協議ができました。