8月 ばいみーキャンプ2015

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 集団キャンプから見えたこと

 2015年8月1日~3日、埼玉の秩父にある中津川村キャンプ場にて、総勢42人(内訳小学生10名、中学生12名、高校生4名、大人・社会人16名)と一緒に毎年恒例の2泊3日のキャンプを行いました。このキャンプは長年のイベントとして活動に位置づいているものです。団体設立当初はこのような小中学生の混合キャンプを行ったこともありましたが、活動の広がりにより、小・中の教室がそれぞれ独立したイベント活動を行うようになりました。しかし、今回のキャンプは中学生だけが参加するキャンプの趣旨を見直すことを考えるために、中学生だけでなく小学生、さらにはEd.ベンチャーのエステレージャー教室の5名の中高生が参加し、年齢幅の広いキャンプを展開することとなりました。すたんどばいみーの教室の参加者は、ベトナム、カンボジア、中国などのインドシナにルーツを持つ子どもが多いのに対して、エステレージャーの参加者はフィリピン、ペルー、ブラジルのルーツであり、多様なルーツを持つ子どもたちのキャンプとなりました。

2日目に行われた「ばいみー運動会」

2日目に行われた「ばいみー運動会」


 外国人家庭の場合、親や家庭の都合、あるいは親子間の会話が成り立たないこともあり、親の許可を得て子どもたちは家を出て外で活動することに難しさが伴います。そのため、キャンプの開催にあたり、子どもたちへの呼びかけをするためにスタッフが子どもたちの家を訪問してチラシを配布し、親たちにキャンプの説明と参加への誘いを行ったことで、子どもたちがよりキャンプに参加することができました。
 現在、すたんどばいみーの教室に参加している子どもたちは、外国にルーツを持つ子どもとして抱える葛藤や大変さになかなか気づかれないことが多々あります。彼ら/彼女らは学校の中で孤立したり、非常に限定された人間関係の中に置かれ、また一方ではほかの人と衝突したりする場面も多々あります。例えば小学校で支援級に通級し、のちに普通級に戻ることになった子どもが、人を「殴る」という行為を通して、自分の「強さ」を示そうとし、そうすることが彼にとって自分を示す一つのツールをなることがあります。彼は親の要求により、普通級に戻ることができたのだが、外国にルーツを持つ子どもの場合、子どもの大変さを障害と結びつけて考えられ、集団から隔離されることがよくあります。学校の先生や回りの人々をも含め、外国にルーツを持つ子どもが抱える困難や大変さを充分に理解せずに、子どもたちの個人の問題とされてしまうことが今の学校現場では当たり前のようになされています。
 そうした子どもたちは、教室に来てもほかの子と関係を作ることが難しい様子がありますが、キャンプ中では敢えて子どもたちを同じグループにすることで、子どもたちの間の関係性を明らかにし、そこからどのように付き合っていくのかを考えたり、話していくことをキャンプの1つのコンセプトとしてありました。しかし、キャンプ中では、教室の中の様子とは違い、子どもたちの間の「摩擦」が少なくなる様子が見られました。それは子どもたちが活動から外れていったときに、スタッフやほかの子どもたちが彼らを活動の中に呼び戻したり、彼らが戻るまで待つようにしたり、子どもの間に「摩擦」が起きたときにスタッフが「何が起きたのか」を子どもたちと話したりすることで解決されました。
 キャンプという日常とは違った空間で行なわれた活動を通して明らかになったのは、彼ら・彼女らがほかの人うまくやれないのは、「勘違い」な行動や発言によって引き起こされたり、自分の意志や考えを充分に聞いてくれる大人や周りの人々がいないことです。外国にルーツを持つ2世・3世の子どもたちは、一見日本人と同じように言葉を話しており、日本の文化にも近いように見えるというところから、教師を含む周りの大人たちは彼ら・彼女らの外国人性を見落として、ほかの日本人の子どもと同様に扱いがちです。そして問題が起きたときに、学校の先生はそうしたことの原因や解決を往々にして親や家庭に求めます。しかし、外国人家庭の場合、親子間の話す言語が違ったり、母国的な価値観を持つ親と日本の文化に近い子どもたちが衝突することも多くあり、家庭がそういった役目を抱えることが難しい場合がよくあります。子どもたちが自分の意志を伝えるための言葉を充分に持っていないこと・あるいはうまく伝えられていないことに気づき、学校の先生を含めた周りの大人たちが、どれだけ言葉を待ってくれて、どれだけ子どもたちを理解しようと努めるか、そこで初めて子どもたちを一人の外国人として接することにつながっていくのかもしれません。
炊事の様子。みんなで協力してご飯を作ります。

炊事の様子。みんなで協力してご飯を作ります。


 今回のキャンプを通して地域で暮らし、顔を見かけた程度の子どもたちがキャンプに集まり、同じ地域で暮らしているほかの外国人の子どもを知ることができました。今後、すたんどばいみーの活動の中で、異年齢集団を考える活動につながりました。そしてもっとも重要なのは、集団から外れてしまう子、衝突が起きてしまう子も、集団の作り方により、十分に参加できる可能性を持つことが明らかになったことです。伝えられない、理解されない、勘違いされる外国人の子どもたちが、周りにいる人々とどのようにつながることが可能なのかを、今後のすたんどばいみーの日々の活動の中で構築していく活動を目指すとともに、学校の先生にも考えてもらいたいと思うところです。
 また、今回のキャンプの課題として、活動に参加する中国人の子どもたちが減ったことも挙げられます。いちょう団地には数多くの中国人家族が暮らしていますが、2011年度の震災以降活動に新規に参加する子どもがあまり見られない。その原因として、中国人家族は親戚内の関係に取り込まれるか、日本社会に同化していくかの2つに分かれると想像することができます。家族に取り込まれていく子どもたちは、日本社会との距離が遠く、中国人的な考え方や文化に沿って、人間関係も家族・親族関係に限定され、またほかのエスニックコミュニティからも距離を置く傾向があると思われます。その対極にあるのは、名前も日本名にし、日本人化して中国人の子どもたちです。彼らは日本社会でより日本人化し、日本社会に適応していくために、自らの中国人性を捨てることもあります。こうした中国人コミュニティに特有の2つの特徴から、中国にルーツを持つ子どもたちがほかのエスニックコミュニティに接すること、あるいはすたんどばいみーのような外国人性を大事にするような活動から距離を置くことが想像できます。今後の活動では、いちょう団地の中国人家族とその子どもたちの現状を知り、すたんどばいみーの活動に参加できる道筋を作らなければいけないと考えています。なぜならば、現在の社会情勢を考えると、日本と中国の関係が険悪になっていく可能性があり、日本社会で暮らす中国人が生きにくい状況が生まれるかもしれないからです。このような厳しい状況の中を生き抜くために必要なことを、当事者として今後考えていかなければいけません。