子ども食堂に関する文献紹介

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 今回は、明石書店の『子ども食堂を作ろう!人がつながる地域の居場所づくり』という本を、紹介します。この本を書いているのは、豊島区で子ども食堂を開いている「NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」の理事の皆さんです。

 1章では、そのWAKUWAKUの設立から、子ども食堂誕生までの経緯が書かれています。始まりは2011年、WAKUWAKU理事長を務める栗林知絵子さんによる中学3年のT君への受験サポートです。栗林さんが代表を務めていた、豊島区事業のプレーパーク(「冒険遊び場」づくり運動)に来ていたT君が、小学校の計算ドリルを手に言った、「勉強のやり方、高校進学について、誰に聞いていいかわからない」という一言。そこから、彼を家に迎えての無料塾が始まりました。T君は母子家庭で食事は自分で買った弁当ということだったので、一緒に食事もすることになりました。しかし、一人で続けるには限界があったので、プレーパークの学生ボランティアたちも参加します。彼らによる学習支援はもちろん、T君を囲んでの賑やかな食事も始まりました。これがきっかけとなり、2012年、地域の子どもを地域で見守りつながるために、「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」が設立、1年後にはNPO法人化しました。2013年2月には無料学習支援、外国籍の子とママのための日本語教室を開始、さらに春には「要町あさやけ子ども食堂」がスタートしました。

 Q&A形式でまとめられた子ども食堂作り方講座の2章を挟み、3章ではWAKUWAKUが開催している他の3つの子ども食堂が紹介されています。孤食の子どもたちと夜の時間を過ごす場として作られた「夜の児童館」がベースとなった「椎名町子ども食堂」、発達障害、性的マイノリティ、外国籍など様々な背景を持つ子どもたちが参加する中で、自分のことを語る場となっている「池袋子ども食堂」、小さくてもいいから、あちこちに居場所ができたらという思いでスタートした「ほんちょこ食堂」。活動場所の提供、食事作り、自身の職業や経験を生かした支援活動など、それぞれができる形で、子どもの貧困に向き合う大人たちの姿、食事を提供する場を超えて、子どもたちの居場所となっている食堂の意義が各理事の視点から語られています。また、この章では、「子ども食堂で本当に子どもが救えるのか」という指摘に対して、理事で弁護士でもある松宮徹郎さんが、子ども支援の入り口として行政機関・専門家との連携の可能性について、書かれています。

 4章では、本の編集委員でもあるWAKUWAKUのメンバー4名による座談会形式で、子ども食堂の未来に向けての課題や展望として、地域住民の主体性の必要さ、助成金や事業委託とのバランス、危機管理等について語られています。

 「知っているひとりの子どもの困りごと」から始まったWAKUWAKUの取り組み。栗林さんの行動を、事務局長の天野敬子さんは、「あえて立ち入るおせっかい」と書いています。目の前の子どもたちのために、という熱い思いが、「おせっかい」の原動力となっていること、そしてその思いが、理事の皆さん一人ひとりに共有されているということがわかる1冊です。

 今年度のスタディツアーでは、子ども食堂への訪問を通して、子どもたちの生活を見つめ直すこと、そして、そこから見えてきた、子どもたちの困難さに「あえて立ち入る」勇気を持ち、支えていけることを目指していきます。